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【ケアプラン作成の難しさ】  とちの実 小谷野

2025年01月06日 | とちの実

先日、担当する入居者さんのプラン目標が更新の時期になったのですが、改めてケアプラン作成の難しさを痛感しました。
ケアプランというのは、簡単にいうと入居者さんとその家族の希望や課題に対し、どのようなケアが必要なのか、ケアするに当たりどのようにアプローチしたら良いか、というものになります。その人がその人らしく生活するためにはプラン目標を決めて、詳細項目ごとにプランを定めてケアをしていきます。
このプラン目標を基本的に半年で見直して行くので、その際に入居者さんと面談をするのですが、希望や要望を引き出すのに一苦労します。認知症の方なので質問が堂々巡りになったり、話題が別の方向に行ったりと、なかなか難しいのですが、そこはこちらもプロなので、少ない情報からご本人がどのように思われているのか考察をします。
職員ひとりではなく、職員間で情報を出し合い、チームで考えてプラン目標を立てて実施しているプランが適切かどうか、実施内容から評価して適切なプランを立てて実施し評価する、というサイクルとなります。
認知症の方なので、出来ることが徐々に出来なくなる中、入居者さんが地域の中で自立した生活を送るための支援はどのようなプランが良いのか、どの程度介入、介助が必要なのか、ここの見極めが難しいと感じるところです。
介助が増えると、出来なくなることが一気に進んでしまいますが、介助を減らすと、不安感を与え精神状態が悪くなり、行動心理症状や事故に繋がってしまいます。
プラン目標を立てたが実情に合うかどうか、プラン目標に対しプランを実施出来ていたのか、ご本人の能力や尊厳が損なわれていないかなど。
半年後の入居者さんの姿を想像してプラン目標を立てていければと思います。

11:01 | Posted by jizai

【編集後記】 理事長 志寒

2025年01月06日 | 編集後記

新しい一年が始まりました。年末年始もそれぞれのペースで生活を送る入居者さんを見ていると、歳を重ねることの意味を考えさせられます。春夏秋冬、季節ごとの行事、それぞれの区切りもありながらも、ただ淡々と一日一日を送っていく皆さん。代り映えはしないようだけれども、かけがえのない貴重な日々。改めて、生活の営みの大切さと愛おしさを感じます。
2024年は私の故郷の能登の大震災で始まりました。昨日と同じ今日を過ごす、今日と同じ明日が来る日々。その当たり前が当たり前でなくなる衝撃と不安。日々の生活のありがたさをまた噛みしめる一年でした。
ありふれた大切な一日一日。その日々を共に重ねる入居者さん、職員たち。そして、それを支え続けてくださる地域の皆さん。本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

10:58 | Posted by jizai

【今年を少し振り返ってみると】  ぶなの実 野口

2025年01月06日 | ぶなの実::ぶなの実3F

早いもので1年経つのもあっという間な感じがします。ぶなの実も8月にやっと満床になりました。女性 7人、男性1人でしたので、Zさんが入居されて男性が2人になりました。
Zさんは大工をしていた事もあり、力がとてもあります。入居当初は、他入居者の女性を自分の奥さんと思い、下まで送っていくよ、とか温かくして寝ろよ等、優しい言葉をかけていました。言われたTさんは、関西の方で、何言うてんねん、ようわからんと、言い返しています。漫才を見ているような面白さもあります。
Tさんも去年12月の終わりに入居されてもうすぐ1年になります。
ずっと関西弁でお話しされるので、ここ1年の間にスタッフ全員に関西弁がうつるという、面白い事もおきています。関西弁恐るべしですね。
Sさんに今年の顔は誰だったかと言う問いかけに、けいちゃんに決まってるじゃないと。けいちゃんとは、桑田佳祐の事です。世間では大谷だ、金メダリストだと騒ぐ中、Sさんの中ではサザンオールスターズの桑田佳祐。流石ですね。
ぶなの実最年長のNさんは、最近バスに一人で乗って出かけたりしています。巣鴨の商店街に行ったり、この前は西新井大師にスタッフと行き、良い写真を撮ってきました。
行ってきた出来事と写真を見せて、とても楽しそうにお話しされていました。まだまだ元気いっぱいです。
Kさんは、名古屋に帰ってみたいと何度か仰っていて、その言葉が現実になり、先月スタッフと名古屋に1泊2日で行くことが出来、息子さんと会って色々お話ししてきたとおっしゃられていました。名古屋城をバックに良い写真を見せてくれました。
Yさんは、目を開かれるだけで、皆が元気になる力を持っています。
AさんとEさんはとても仲が良く、外に出かける時も、歌を歌ったり、話ししたり、大声で笑ったりとても楽しそうです。
Oさんは皆のお父さん的存在で、他入居者さんも、お父さんお父さんとよく言っています。
笑顔がとっても素敵で、スタッフが帰る時は、必ず手を振って見送ってくれます。
最後に、スタッフにも入居者にも愛着の良かったスタッフが産休に入りました。
また来年新しい年を迎えますが、楽しい入居者様と一緒にスタートしたいと思います。

10:57 | Posted by jizai

【編集後記】  理事長 志寒

2024年12月03日 | 編集後記

ある日、ある事業所に向かっているときの光景です。
買い物にでも行くのでしょうか、その事業所の職員が二人の入居者さんと歩いていました。職員が真ん中、両手で手をつなぎ、三人が並んで、それぞれが笑顔です。高齢の女性が二人、若い女性が一人。歳も違えば、血もつながってそうでもない。はたから見れば、どんな関係がわかりづらい三人組ですが、まるでいつもそうして生活しているか のように、握っている手を揺らしながら歩いています。
ファイル 625-1.jpgもちろん、職員にとっては業務の一環で、気を張って常に入居者さんの安全確保や状態観察を行っているのでしょう。しかし、職員自身も入居者さんも笑顔で、私はそのあまりに自然なふるまいに、しばらく目を奪われていました。
今年の一月に、共生社会の実現を推進するための認知症基本法が施行されました。そこには「新しい認知症観」がうたわれていますが、はたして新しい認知症観とはなんでしょうか?いわく“なにもできなくなるわけではない”、“能力のある存在である”、“希望をもって生きることができる”など、どれも本当は人間にとって当たり前のことです。いま問い直されているのは、認知症や認知症状態にある人ではなく私たちの方です。必要なのは一定以上で定型の認知機能を前提にしない、そんな人間観なのでしょう。
その新しい人間観が育まれたとき。この三人のような不思議な関係性。そんな風景がありふれたものになっていくのではないのでしょうか。

22:42 | Posted by jizai

【運動会】  ぶなの実 大塚

2024年12月03日 | ぶなの実::ぶなの実3F

10月までは暑い日が続いていましたが、11月に入った途端、急に寒さがやってきましたね。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今回はぶなの実の入居者さんについてお話ししたいと思います。
Nさんは今年94歳になりますが、ぶなの実で1番の働き者です。最近、首の痛みがあるNさん。普通なら首が痛いからお部屋で休もうとなる所ですが、Nさんは違います。「首が痛いから散歩に行ってきて良い?気分転換しないと」と仰います。なんて、凄いのでしょう。その元気を私にも少し分けて欲しいくらいです(笑)。
そんなある日、近隣の小学校で運動会がありました。いつもと同様にNさんは「首が痛いから散歩して来るわ」と。そんな時、Sさんが「近くの小学校で運動会をやっているわよ。一緒に行ってみない?」とお誘いしてくださいました(いつもSさんはNさんがお一人で出掛けて迷子にならないか心配してくれています)。
この時間は職員が一人勤務の為、同行出来ず、お二人で近隣のコンビニでジュースを2本購入し、いざ運動会へ。
運動会も昼休憩となり、お二人が戻って来られました。あれ?何か持っている!?と気づいた私は「何を貰ったのですか?」とお聞きしました。するとSさんは「かけっこしたら景品貰っちゃったのよ!」と。すると後ろにいるNさんも持っているではありませんか!!「ばばもついでに走って貰っちゃいました」と笑顔でお話ししてくださいました。
もし職員が同行していたら、走るのは危険だからと止めてしまっていたかもしれない。またお二人も気を使って走らなかったかもしれない。お二人の残存能力はまだまだ未知数だなと感じる事の出来た1日でした。
今ではお二人の走っている姿が見られなかった事がとても残念です。

08:44 | Posted by jizai

【外界からの刺激】  とちの実 渡邉

2024年12月03日 | とちの実

近年の新型コロナウイルス感染症が流行する以前は、日帰り、一泊旅行、お花見などなどの行事、非日常を楽しんでいただく外出に何度もご一緒しました。道中は、ご入居者様が認知症であることを忘れてしまう程、感心する出来事が多く、貴重な経験をさせていただいています。
感染症の蔓延が収まり、再び外出が出来るようになって、A様と映画館に行ったときのことです。
A様は日常、テレビから放送されるショッキングな映像や音声に反応して、「ひやぁ~」と言いながら身震いをしリアクションが大きい方です。
今回鑑賞した映画は、吉永小百合主演の『こんにちは、お母さん』。
歩行が困難な為、車椅子で出向きました。上映場所の車椅子席が最前列の端っこでした。宣伝映像から見始めたので、音量がいちだんと大きく様々な作品予告の見せ場シーンが次々に出てきて、私でさえど迫力に驚き声がでそうになっていました。なので、A様が悲鳴を挙げないかとヒヤヒヤしていました。
しかし、私の心配をよそに、A様は比較的落ち着いて、見上げるように画面を見ておられたのです。時々横に座る私の方をみて、小声で「すごいね」などと話しかける余裕です。
本編が始まると、やや静かなシーンから始まった為、少し目を閉じており、このまま傾眠されるようなら、途中で切り上げることも考慮していましたが、こちらから少し肩を「トントン」と叩くと、少し笑みを浮かべて画面をみなおされていました。
その後、目を閉じていることがチラチラありましたが、最後まで鑑賞されました。
映画の内容を把握していたかはわかりかねますが、さすが大女優と言われる方の演技はA様にも伝わったようで、エンディングの花火シーンで、私にうなずきかけ「きれいね」「よかったね」と仰っていました。
最後まで無事に鑑賞できたことに役目を果たせたとひとまずホッとしたあと、上映場所からロビーに出たところ、A様の口から「あっちに行く」とトイレの方向を指さされたので少しびっくりしながらお連れしました。移動から考えると結構長時間だったので失禁があるのではと思っていたら、自然に用をたされました。
その後、トロミ付きの飲み物を飲まれるA様、暗闇で飲むことを控えさせてもらったので、カフェスペースでココアを 購入しトロミをつけてご提供。
いつも言葉にならない発語が多く、なかなか意思疎通が出来ない方なのですが、お茶を飲みながら「美味しいね」とおっしゃり、映画についてたずねると「良かったね~」と語尾を伸ばし、その表情からも楽しかった事が伝わりました。
帰り際に荷物を持つ私に「それ持とうか」など驚くほどはっきりおっしゃり、とても頼もしくおもえました。A様は終始、にこやかに過ごされ、その横顔が、とても生き生きとされていたのを覚えています。
非日常的な環境のおかげでしょうか?いつもと違う、でも今まで経験したことのある空間が、本来のお姿を呼びもどされたのか?私が知らなかったA様と過ごすことが出来て嬉しく、良い思い出になりました。

08:43 | Posted by jizai

【編集後記】  理事長 志寒

2024年11月08日 | 編集後記

秋も深まりましたが、秋といえば食欲の秋ですね。 歳がばれてしまいますが、その昔「クイズ地球まるかじり」という番組をよく見ていました。そのプログラムの中でも「一発逆転ごはんですよ」というコーナーがお気に入りで、一般のお宅の食卓を撮影し、その人がお味噌汁やおかずやご飯が並ぶ中で、どの順番で食べるかを当てていくというものでした。
たいていの人は最初の一口はお味噌汁やお漬物が多く、その一口目は簡単すぎるので、二口目や三口目がクイズ に出されるのです。さてはて、あのお漬物は塩辛そうだから、そのまま白ご飯に箸が伸びるだろうとか、揚げ物の次はサラダにいくだろうなとか、推理しながら答えのVTRを待つのです。いま考えると何を夢中になって楽しんでいたのかわかりませんが。
そんなことを思い出しながら、いまは入居者さんの食事風景を見守っています。
Fさんは肉じゃがが好きだから、まずは芋を数口食べるだろうな。でも、のどに詰めないようにお味噌汁にいってほしいな、などと考えながら。そうしていると、普段と違う箸運びから身体の変調に気が付くこともありますし、もし、その人が食事の介助が必要になっても、好きな順番で口に運んで差し上げられるなと思うのです。
それにしても、おいしく食べている光景は心が和みます。いつまでも、この風景が続きますように。

16:26 | Posted by jizai

【十年選手】  とちの実 中島

2024年11月08日 | とちの実

グループホームの平均入居期間は3年なのだそうです(日本認知症グループホーム協会調べ)。とちの実に今現在の入居者さんの入居年数は計算したところ5.4年くらいでした。長くご利用を頂けてとてもありがたいです。
平均が5.4年なのでそれよりも長い人もいますし、ご入居半年くらいの人もいます。そしてなんと(?)、とちの実には 10年以上の入居者さんがお二人いらっしゃいます。おひと方のAさんは年が明けるとご入居丸12年です。ご入居時にはなかなか環境に馴染めませんでした。ハンガーストライキみたいなことをなさったり、俺はアパートを借りて出ていくと不動産屋(の前)まで行かれたりしていました。しかし、今ではすっかりとちの実の生活に馴染まれて、洗濯、掃除、食器洗い、お買い物と能力を発揮し、活き活きと生活をされています。最近は毎日のように私と、「Aさん、洗い物がたくさん溜まってますねぇ。誰かやってくれないですかねぇ?」『どうぞどうぞ、ご自由に!』「じゃあお言葉に甘えてAさんにお願いしようかなぁ」『えー!?』という小芝居みたいなやり取りをして笑い合っています。
もうお一人の十年選手のBさんも、来年でご入居から丸12年になります。ご入居時はまだ50代でした。ご入居前の面談で服用中のお薬を伺った際に「認知症の薬を飲んでいます」と仰っていたというのが印象に残っています。Bさんは元々医療関係のお仕事をなさっていたそうです。なのでご病気に関しての知識はお持ちでしょうから、ご自分のこれからのことに人一倍不安を感じておられたのではないかなと思います。遠慮しがちなお人柄のため、他の入居者さんに対して萎縮なさることがないようにと、皆気をつけて支援をしてきました。私が一緒に食材のお買い物に行ったとき、「お菓子も買っていきませんか?」と提案すると『やったぁ!』と言って喜ばれていたのが印象に残っています。とてもキュートな人だなと思いました。今現在はご病気が進行したことやお怪我の影響で、自力で動いたり意思疎通をすることは難しいご状態ですが、昔からお好きだったというハーゲンダッツアイスや音楽、サザン、ユーミン、竹内まりやなどは変わらず楽しまれています。
そして今年の11月で丸10年になるCさんもいらっしゃいますので、また別の機会にエピソードをご紹介させて下さい。こんな感じでお一人お一人の入居者さんを長年に渡って支援させてもらえているのはとても幸せなことだと思っています。

16:25 | Posted by jizai

【ぶなの実沸騰ワード】  ぶなの実 宝田

2024年11月08日 | ぶなの実::ぶなの実3F

こんにちは、ぶなの実の宝田です。
10月に入ったのに暑いですねぇ!そう、今日本は温暖化ではなく沸騰化と言われる時代です。10月の中頃にこの記事を書いているのですが、まだまだ暑く半袖半ズボンで出勤する日々です。沸騰と言えば日本テレビで沸騰ワードと言う番組があって、みんなそれぞれハマっているものに対して沸騰していると表現しているのですが、ぶなの実のSさんの中でずっと沸騰しているものがあり、それがサザンオールスターズなのです。
桑田佳祐の事を「けいちゃん」と呼んでいて、けいちゃんがテレビに出ると知ると、ちゃんとメモを取って「今日けいちゃんがテレビ出るのよ」と嬉しそうに職員に言ったり、ラジオをやる事になると「このラジオどうやってやれば聞けるの?」と職員に持って来て夜遅いのにラジオを聞いたり、余暇でカラオケをやる時も職員に「いとしのエリー歌って ~」と仰られたりしています。
でもそんなけいちゃんが最近テレビに出ていたのを見た後に「けいちゃんも歳とったわねぇ、昔はあんなにかっこよかったのにおじいさんになっちゃって」と、少し寂しそうにされているので、もしかしたらSさんの沸騰も終わってしまう日が来るかもしれません。
Sさんの沸騰は終わらないで欲しいですけど、気象の沸騰化は終わって欲しいですね。

16:25 | Posted by jizai

【編集後記】  理事長 志寒

2024年10月18日 | 編集後記

ある昼下がりにリビングでサスペンスドラマが流れています。それを見ていたとある入居者さんが「悪党はなかなか捕まらないねぇ」と仰いました。そのうち、話の進行に関わらず「悪党は~」と同じ言葉を数分おきに繰り返します。そのお隣の入居者さんがふとしたきっかけで「大泥棒だ」「大泥棒だ」と迫真の表情でコールしはじめました。そして、テレビの中の刑事たちを期待のまなざしで見つめています。
お二人の状況はそれぞれ、記憶障害や注意の持続力の低下、テレビと現実の錯誤など、認知症の症状として説明できるかもしれません。しかし、このお二人は、いまここにおいて、このドラマを最大限に楽しむことにかけては、日本で最高の視聴者だともいえるのではないでしょうか。
認知症とともにありながら、いまここで活き活きと輝くひととき。そんなひとときを積み重ねる事業所でありたいと思いました。

09:44 | Posted by jizai