先日、お誕生日をむかえられ、94歳になられたA様と電車を利用して、美術館へご一緒しました。
A様は、日頃から気温の変化に敏感で、ちょっとでも風がふいて、寒さを感じたら「お~寒い」と極寒にさらされている様な声で身体を縮こませる方です。
この日は、やや風も吹いていたので、万全な防寒対策をして出掛けました。
また、ほんのわずかな刺激でも 顔をしかめて「いたっ 痛たいよ」と口癖のようにもうされるので、車椅子をご利用さるA様が移動中の、段差や坂道で嫌な気持ちにならないように、背後から耳元へ声かけしてまいりました。
しかし、心配していたワードは全く発言されなかったのです。冷たい雨が降った前日と一変した晴天となり、久々の遠出が、お気持ちを晴れ晴れとさせたでしょうか。
常に穏やかでいらしゃり、こちらからお話はかけをしなくても、「おお、いい天気だ」「暖かいね」と何度もおっしゃられ、にこやかな表情をされました。また、観覧中も作品の前で「おぉ~ 」「立派だねぇ」と言って、目を大きくしたり細めたりしてご覧になりました。
それから、 隣接した場所にあるパノラマの景色が望めるレストランで昼休憩をしました。
こちらでは座席に移動し、注文した料理を待っている間に、ゆっくりと左右を見渡し「おお、雄大な景色だね」「もう、桜が咲くのか 」などとおっしやいました。冒頭にもお話はしたようにA様はとても表現力がある発言をされるので、これらの言葉の発音も感情豊かでした。
帰り道、後少しでとちの実に、たどり着こうとした時、A様から「疲れてないか?ご苦労だったな」と声をかけていただきました。車椅子を押していたのでその時の表情は拝見できませんでしたが、そのお声の様子から今日の出来事を満喫していただけたのではと感じ取れました。本当にご一緒して良かった。喜ばしい気持ちになりました。