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【鋭敏な心】 とちの実 中島

2011年03月23日 | とちの実

こんにちは、とちの実の中島です。今回は最近読んだ本の紹介をしたいと思います。
~認知症の人の歴史を学びませんか 宮崎和加子-著 田辺順一-写真・文~
訪問看護を経て、認知症グループホームの開設や運営に携わってこられた宮崎和加子氏と共に約四十年間の認知症の人の歴史を振り返るという内容です。認知症になったお年寄りが座敷牢のような場所で人生を終えざるをえなかったような時代のこと、特別養護老人ホームでの認知症の人の受け入れ、身体拘束の禁止、認知症グループホームの試み・・・と、認知症の人を取り巻く状況のがどう変わってきたのかを読むことができます。 また、認知症の人だけでなく支援が必要な人々の生活・生きることの支援のあり方を根本から作り上げ、体系的に確立していくという日常生活支援学の提唱など、これからの社会を考えていく上でも大変な示唆に富んだ内容です。後半は写真家の田邊順一氏の"写真が物語る認知症の人の歴史"となっていて、当時のお年寄りの置かれた状況を、写真と文で垣間見ることができます。枕元に立つこともできないほどに隙間なく並んだベッドに寝かされた大勢の人達、ベッドに縛り付けられた人、つなぎ服を着せられ鉄格子の前に立つ人の姿に当時の介護の現場を知らない私は大変な衝撃を受けました。
しかし、これらの状況が必要悪とされていたこの時代でも進歩的な人達はおられたのですね。行動抑制の廃止のための"縛らない実践"や、QOLを高める取り組み等をはじめられ、それが現在までの認知症の人を取り巻く社会の動きへと繋がっているようです。
そこで、もし自分がこの時代のこれらの施設で仕事をしていたらどうしていただろう、と考えます。最初は「気の毒だな。なんとかならないものか・・」と思いながらも日々をくり返し、その感覚を麻痺させていただろうと思うのです。当時現場で働いていた先輩方はきっと色々な想いで頑張っておられたのだろうと思います。
ふと気付けば、介護・自立支援に関わる仕事を始めて五年が過ぎていました。離職率の高いこの世界では割と古い部類か、中堅くらいになっているかもしれません(年数だけは)。 時々、この仕事を続けていく者にとって最も重要なものは何だろうかと考えます。私は、心の鋭敏さを大事にしたいと思うのです。どこかに矛盾が潜んでいるとしたら、それに気付いて声を上げることのできる心の鋭敏さです。進歩的であることに繋がると思います。
では、どうやったら鋭敏でいられるのか。そうありたいと思っていればいいのでしょうか? ではなくて、自分の鈍さと向き合っていくしかないと思うのです。普段から自分のしたことを省みて、習慣のわだちに嵌まらないこと。また、心を鈍らせていくものについてよく考えること。 ちっぽけな私ですが、微微々々力ながらも歴史の歯車を全ての人にとって好ましい方向に、少しでも進める手伝いができればな、と願います。
本の紹介から脱線して随分ありきたりなことを書いてしまったような気もしますが、気持ちを新たにさせてくれた一冊でした。巻末近くの、グループホームで暮らす方々のナチュラルな笑顔にとてもホッとさせられます。皆さまも読まれてみてはいかがでしょうか。

10:38 | Posted by admin