今年で91歳になられるIさん、とちの実に2009年の夏にご入居され、4年半の間生活をされましたが、医療的な支援が必要となり、5月にとちの実をご退去されることになりました。
Iさんは一見小柄で温和なおじいちゃん。いえ確かにそうなのですが、それだけではありません。戦時中は海軍におられたそうで、一本芯が通ったというか、大変な底力を感じさせる人です。目がかなり見えづらくなっておられるのですが、感覚を頼りに包丁で野菜を切る姿にいつも驚かされていました。 お酒がお好きで毎日のように晩酌を楽しまれ、川越への旅行の宴会で“できあがった”お姿を思い出すと今でもニヤニヤしてしまいます。 また、一緒に居酒屋に行ったときは、杯を持つ手に集約された年月に恐れ入るばかりでした。・・・お酒の話が続いてしまいましたね。
特に思い出深いエピソードがありまして、それは二人でお買い物に出かけたときのことです。 私は(おそらく他の職員も)、入居者さんに殊更にアピールして自分の名前を覚えてもらうということはなかなかありません。「ああ、いつものあの人ね」という存在であることが多いです。 Iさんにとっても私は、顔なじみ(声なじみ)のあの人なのだろうと思っていたのですが、そのとき突然呼ばれたのです。「中島さんよぉ」と。 名前を呼んでもらえるのがあんなに嬉しいとは思ってもみませんでした。 よくある話なのかもしれませんが、誰が何と言おうとIさんとの、このエピソードは私にとって特別なのです。
Iさん、たくさんの素的な思い出をありがとうございました。
穏やかな時間をすごされますよう祈ります。