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【恋しちゃいました】  つげの実 新山

2021年10月31日 | つげの実

それは突然始まった。
荷物をまとめ玄関へ勢いよく走り出すRさん。
Rさん、どうしたのですか?と後追いして話を聞く職員。
「夜中にLさんの部屋で男性が変な事をしていた。変な事をするところだと知らなかったわ。こんな所に居られない。家に帰ります。」と。
男性は夜勤の排泄介助をしていた。偶然見かけたRさんがそう言い出したのだ。
そして何かある度バックを持ち勢いよく玄関へ走る姿が見受けられるようになったのです。
家にタクシーで帰宅された事もありました。
ある朝、「Lさんが、男性にアイコンタクトをしたら男性もアイコンタクトしていた。色目使って感じ悪いわ。」と言う。
普段は、とても穏やかで優しく、読書が好きで習字で詩を書いたり音楽を聴いたり買物が好きなRさん。
その男性が姿を現すと表情が変わり嫉妬の渦を巻き起こす。
Rさんは93歳。Lさんは90歳。男性は50代。
つげの実が、ざわつき始め数カ月が経ちます。
今日も、嫉妬して帰ろうとしていたRさん。この恋物語は続く。
90歳を過ぎて誰かを好きになったり嫉妬したり、その方を通して当たり前の恋愛感情は何歳になっても消えることなく続くのだなと気付かされました。
情熱の灯は消えないものである。それは消える事の無い感情。
とことんお付き合いさせて頂きます。

12:13 | Posted by jizai