つげの実には、9名の入居者様たちが共に生活をされておりますが、90歳を超えられている方が、2名いらっしゃいます。
お一人は、男性の方で、つげの実が開設された当時からご入居されている方です。もう一人は、この2月にご入居された女性の方です。
このお二人は、同い歳の大正生まれですが、毎日の生活を見ておりますと、ある一つの共通点がございます。
それは、お二人とも、おしゃれ、ということです。
つげの実では、居間からトイレに行くまでに、長い手すりがあります。
その手すりのちょうど中間あたりの向かい側に洗面所があり、その奥に大きな鏡があります。手すりをつかまっていると、その大きな鏡を見ることができるので、女性の方は、トイレの帰りにその位置に立ち止まり、鏡に写った自分の顔を見ながらポケットに入っていたブラシで髪の毛を梳かしたり、手で整えたりされてから、居間のほうへお戻りになられます。
男性のほうも、おもにトイレのあとに洗面所まで行き、洗面所に置いてある手グシで髪の毛を整えていらっしゃることが見られます。
おしゃれをするということは、自分をきれいに、かっこよく見てもらいたいという表れだと思います。人から見られているという意識があることだと思います。
また、人に不快感をあたえてはいけないという、思いやりや優しさから生まれていくものなのではないかと思っております。
人は一人では生きていけない、常に人と交流をもったり、関わっていきながら日常生活を過ごしていくということを、このお二人は長い人生のなかで、十分ご存知でいらっしゃるのだと感じております。
男性の方は、入居当時と同じように元気で優しい表情をされております。
女性の方のほうは、人生これから、というご様子で、毎日皆さんにいろいろなことを大きな声でお話してくださいます。
こう考えさせていただきますと、おしゃれは元気の源で、長生きの秘訣なのではないかと感じております。
このお二人からは、まだまだいろいろなことを学ばせていただき、つげの実でご一緒に生活を続けさせていただければと思っております。