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【非言語的なコミュニケーション】 とちの実

2017年05月31日 | とちの実

必勝法とまではいきませんが、ジャンケンでの勝率を上げる法則があります。皆さんご存知でしょうか。統計によるとじゃんけんでは最初はグーを出す人が一番多く、次に多いのがパー、そして一番少ないのがチョキだそうです。ですので、勝率を上げようと思ったら、最初にパーを出します。あいこになった場合ですが、同じ手を続けて出す人は少ないため、次に相手の出す手はグーかチョキの可能性が高い。なのでこちらは次にグーを出すと勝率が上がります。で、再びあいこになった場合は同様の理由で、チョキを出せば勝率が上がるようです。
最初にグーを出す人が多い理由が気になりますが、これは人間が緊張感で本能的に手のひらを隠す性質を持つためと聞きます。確かに緊張しているときや、ちょっと居心地の悪い時などは、手を握り込んでいることが多いです
よね。ほかに、腕組みをする、脚を組む、目を閉じる、ポケットに手を入れる、等、身体を縮こめたり身体の一部を隠そうとする傾向があるようです。
これらは他人を寄せ付けたくないという代表的な非言語的サインでもあるわけですが、このサインの読み取りが、認知症の人とのコミュニケーションにおいてかなりのウェイトを占めます。
とちの実にご入居されているAさんは、とても陽気でお話し好きなお人柄でいらっしゃいますが、認知症が進行するのにしたがって、言葉でのコミュニケーションがだんだん難しくなってきています。会話の中で(私にとっては)意味の分からない言葉が増えました。また、Aさんなりの理由から、お風呂に入ることを拒否されることが多くなっています。そんなAさんに気持ちよくお風呂に入ってもらえるように私達職員は言葉掛けをしたり、環境を整備したりとアプローチをしていくわけですが、この過程で非言語的なサインがとても役に立ちます。
まずはAさんの隣の席に座らせてもらい、コミュニケーションをとりたい考えます。
・・う~ん、でもなんだか良い表情をされていないな。腕を組んでいるし、脚も組んでいるし、肩で呼吸しているな。
でもいっちょ隣に座ってみるか。 さてと座ってみたが・・ああ、やっぱり今は何も言って下さらないな。 それでもこちらから話しかけずに少し待ってみよう。 なるべく自然に微笑むようにして、Aさんと呼吸を合わせてみます。Aさんのポーズを真似るのもいいかもしれないけどここは止めておこう。 ・・・・・少しの間待って間を計ります。そしてAさんが息を吸いきったあたりでチラッと顔を見ると、Aさん、私の方を向き「最近痩せた?コッペパンロールがぺれっぽんが・・・」と心配そうに話しかけて下さいました(やった!)。脚は組んだままですが、腕の方は解かれました。Aさんの話される言葉の意味を理解するのは難しいですが、私のことを労って下さっているのと、ご自身の食べる物のことを気にかけていらっしゃる様子。Aさんの方をしっかり向いて「うん、うん」と、声に出して大きく頷き、感謝の気持ちと、心配しなくて大丈夫だよ、というメッセージを言葉と動作で伝えます。
Aさんは変わらず脚は組んだままですが、上半身は私の方に傾けていらっしゃいました。
で、そこからお風呂にお誘いするわけですが、そこでも非言語的なコミュニケーションを駆使してAさんと向き合います。ここから先は文章にできないくらい繊細なやり取りになるので、企業秘密です(笑)もちろんお風呂を断固拒否なさることもありますけどね。 入浴されて清々しい顔で「自分じゃないみたい!さっぱりした!」と仰るAさんを見るのも好きですが、お持ちのコミュニケーション能力を駆使してのAさんの拒否を受け止めるのも私は好きです。どちらにしてもAさんと心が通じ合ったような感覚を楽しんでいます。

17:24 | Posted by jizai